刑事事件ブログ
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1 令和2年6月2日,あおり運転による妨害運転を直接に厳しく取り締まる道路交通法の改正が成立しました。改正道路交通法は,令和2年6月10日に公布され,6月30日から施行されます。
この改正によって,他の車両等の通行を妨害する目的で,実際に,交通の危険を生じさせるおそれのある方法によって,次の10項目のいずれかの違反行為をした者について,酒気帯び運転に匹敵する,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑罰が科されることとなりました(改正道路交通法117条の2の2第11号)。
さらに,これらの行為を行った結果,高速道路等で他の自動車を停止させる等,道路における著しい交通の危険を生じさせた者については,酒酔い運転に匹敵する,5年以下の懲役又は100万円以下の罰金という刑罰が科されることとなりました(改正道路交通法117条の2第6号)。
① 通行区分(左側通行)違反(道路交通法17条違反)
② 急ブレーキをかける行為(道路交通法24条違反)
③ 車間距離を詰める行為(道路交通法26条違反)
④ 急な進路変更(割込み)(道路交通法26条の2違反)
⑤ 乱暴な追越しや左からの危険な追越し等(道路交通法28条違反)
⑥ ハイビームやパッシングによる威嚇等(道路交通法52条違反)
⑦ 不必要なクラクション等(道路交通法54条違反)
⑧ 幅寄せや蛇行運転等の行為(道路交通法70条違反)
⑨ 高速道路での最低速度違反(道路交通法75条の4違反)
⑩ 高速道路での駐停車禁止違反(道路交通法75条の8違反)
2 これらの10の行為は,概ねわざとするのでないと行うことがないようなものですが,1つあいまいなものが含まれています。③の「車間距離を詰める」行為がそれです。
道路交通法26条は,「その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を」「保たなければならない」としています。
ただ,「追突するのを避けることができるため必要な距離」は,道路の構造及び状況,天候,前の車の速度,自らの速度,自らの健康状況といったさまざまな状況によって,ブレーキを踏んだときの制動距離に差が出るため,変わります。そのため,運転者が,あおり運転を行っているつもりがなくても,「車間距離を詰める」行為として摘発されてしまうおそれがあります。
そのような場合,もし,刑事事件として立件されてしまうと,客観的に,「追突するのを避けることができるため必要な距離」を空けていたかどうか,運転者が主観的に,どの程度の距離が「追突するのを避けることができるため必要な距離」と考えていたか等によって,「他の車両等の通行を妨害する目的」があったかどうか,をシビアに争うことになると思われます。
3 なお,令和2年6月5日,あおり運転によって交通に重大な危険を生じさせて,死傷事故を誘発する行為を厳重に処罰する,自動車運転処罰法の改正も成立しました。
改正自動車運転処罰法は,令和2年6月12日に公布され,令和2年7月2日から施行されます。
この改正の結果,交通の危険が生じる危険のある速度で走行している他車の前で停止したり,高速道路などで急接近して徐行・停止させる行為をしたりすることによって,死傷事故に結びついた場合は,危険運転として,処罰されることとなります。
被害者を死亡させてしまった場合の刑罰は,1年以上の有期懲役,傷害させてしまった場合の刑罰は,15年以下の有期懲役です。
4 いったん交通事故を起こしてしまうと,懲役や罰金など,刑罰を受ける刑事上の責任のみならず,免許の取り消しなどの処分を受ける行政上の責任,被害者に対する賠償責任を負う民事上の責任が生じます。
当事務所では,民事事件について,たくさんの交通加害者の交通事故事件,特に,事故発生の責任の有無及び程度を争う事件を扱っており,ノウハウを蓄積しています。
これらの交通事故加害者の民事事件で蓄積してきたノウハウは,交通刑事刑事事件でも大いに活きています。
交通に関する刑事事件でお困りのことがありましたら,是非,当事務所の弁護士にご相談ください。
名古屋丸の内本部事務所 檀浦 康仁